妖怪司書の本棚

架蔵の妖怪本の書影・書誌・目次をひたすら誌す。

『怪異学講義』

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『怪異学講義:王権・信仰・いとなみ』

著者:東アジア恠異学会 編

出版地:京都

出版者:勉誠出板

出版年:2021.9

大きさ容量等:445p ; 19cm

目次

序論 怪異学の視点(大江篤)…1
 はじめに
 一 「怪異学」のはじまり
 二 「怪異」とはー言葉へのこだわり
 三 学際から生み出された視点ー拡散論・媒介者論
 むすびにかえて

総論 怪異学とは何か
日本の怪異・中国の怪異・その西方の驚異(榎村寛之)…33
 一 東洋の「恠異」
  日本の「恠異」
 二 日本における「恠異」の受容と「驚異的」なるもの

 三 日本の「驚異」とキリスト・イスラーム世界の「怪異」
 おわりにー「怪異」と「驚異」

国家統治と怪異(久禮旦雄)…54
 はじめにー「怪異」という言葉をめぐって
  怪異の意味するもの 拡散する怪異
 一 日本古代における「怪異」の受容と変質 
  六国史の怪異 『類聚符宣抄』と『本朝世紀』の怪異 読み換えられた「天」
  独占された卜占の技術
 二 「怪異」の形成ー知識の受容と独占
  陰陽寮の成立と式占 陰陽寮の成立の意味 神祇官の成立と亀卜 神祇官の成立の意味
 三 「怪異」の変質と拡散ー判断から不安へ

  『小右記』の怪異 『古今著聞集』の怪異
通俗信仰と怪異ー前近代中国の基層社会における災異受容史(佐々木聡)…77
 はじめにー怪異をめぐる社会通念
 一 天変地異をうらなう「天文五行占書」の成立
 二 中世の通俗占書
 三 近世の怪異占と辟邪

 四 通俗占書の利用と宗教者の関与
 おわりに

各論 怪異から考える
第1部 王権と怪異(久禮旦雄)…101
 一 警告する始祖たち
 二 神々の合議
 三 もう一つの国家
 四 分裂する怪異
 五 霊は沈黙する

社寺と怪異ー春日社の山木枯槁を中心に(山田雄司)…113
 はじめに
  中世社寺の怪異 多武峰の鳴動と鎌足木像の破裂
 一 山木枯槁の発生
  春日社と石清水八幡宮との対立 春日社の御神楽 
 二 由緒の形成
  嘉元二年の山木枯槁 神護景雲二年の御託宣 時風置文 山木枯槁と神木動座
 三 中世最後の山木枯槁
  元亀三年山木枯槁 虫の発生

 おわりに
  謡曲采女」 神棲まう春日山
奇談と武家家伝ー雷になった松江藩家老について(南郷晃子)…133
 はじめに
 一 雷電になった乙部九郎兵衛
  葬儀中の雷 『本朝故事因縁集』「乙部氏為雷電」 「乙部九郎兵衛某」
 二 高野山と乙部可正雷電
  「出雲国乙部氏檀縁由来」について 僧侶清雄による解釈 「附書」と『本朝故事因縁集』
 三 乙部家の記録と雷神伝承
  「慶安二己巳年六月八日」の記 忠誠心と雷電
 四 可正雷神伝承の展開
  『雲陽秘事記』における記載 天神の発見と可正の神格化

 おわりに
鎌倉幕府と怪異ー『吾妻鏡』の怪異を読む(赤澤春彦)…154
 一 古代・中世の国家と怪異
 二 鎌倉幕府における怪異の認定
 三 鎌倉における怪異の「時」
  偏りを見せる怪異の記事 幕府創設期の怪異 頼経期はなぜ怪異が多いのか
  鎌倉における陰陽道の整備
 四 鎌倉における怪異の「場」

  鎌倉中の怪異 海辺の怪異 打つ寄せられる大魚 怪異を祓う境界、由比ヶ浜 東国における怪異
 五 鎌倉における怪異の種類

  動物の怪異 源氏将軍と鳩 黄蝶乱舞 漂う魂魄「光物」 怪異を祓う祭祀、百怪
  怪異が「記録」されること
幕末の陰陽頭・朝廷と天変(杉岳志)…171
 はじめに
 一 天保十四年の彗星
  天変の正体 晴雄の見解 親子二代の彗星観 晴雄の見解に対する反応 朝廷の対応
 二 嘉永六年の彗星
  勘文から読み取れる晴雄の本音
 三 安政五年の彗星
  勘文に生じた変化 彗星と将軍家定の死 蛮夷・彗星・異病 安政六年の彗星?
 四 文久年間の彗星
  合致した彗星観 旧説の復活
 おわりに
コラム・古代日本への「天」の思想の伝来(細井浩志)…188
 はじめに
 一 怪異・天文と天の関係
 二 天下の範囲
 三 天と上帝と天照大神
 四 中世の変化

第2部 信仰と怪異(久留島元・佐々木聡)…201
勝利に導く祖霊(佐藤信弥)…207
 はじめに
 一 〈殷代・西周時代〉祖霊の加護を求めて
  殷代の戦争と卜占 殷周時代の宗教信仰 西周時代の戦争と祖霊 出征の前後の祭祀
 二 〈春秋・戦国時代〉軍礼から兵法へ
  春秋時代の戦争と卜占 宋嚢の仁 作戦・計画の場となる宗廟 祖霊観の変化
 おわりに
霊験・神異・感通ー中国仏教における怪異なるものへの態度(佐野誠子)…223
 はじめに
 一 志怪における仏教の怪異
  志怪における仏教の流入 仏教志怪の登場
 二 霊験・応験記
  『観世音応験記』 唐代の霊験記
 三 彗皎『高僧伝』の神異
  『高僧伝』神異篇 『高僧伝』における怪異なるものとの向き合い
 四 道宣『続高僧伝』の感通
  『続高僧伝』感通篇 感通篇の増補 神異から感通への拡張 『続高僧伝』における冥界
 五 道宣の感通に関する著作
  『集神州三宝感通録』 『道宣律師感通録』

 六 その後の仏教と怪異
  霊験記その後 『宋高僧伝』感通篇
道教と神降ろし(山田明広)…242
 はじめに
 一 神を降ろして憑依させる

  (1)茅山の神降ろし (2)扶乩(フーチー)
 二 神を儀礼の場に招き迎える

  (1)存思 (2)上章 (3)斎 (4)醮 (5)その他の呪法 (6)現代の台湾の道教儀礼
 むすび

天狗信仰と文芸(久留島元)…270
 一 天狗の研究
 二 天狗信仰の現在
 三 画期としての鞍馬天狗
 四 アタゴ山の信仰史
 五 アタゴの天狗
 六 愛宕山縁起と日羅

疫病と化物(笹方政紀)…290
 一 令和の流行病とアマビエ
 二 疫病神と甘酒婆
  疫病神 甘酒婆
 三 疫神送りと高入道
  疫神送り 高入道
 四 疱瘡神祭りと猩々
  疱瘡神祭り 猩々
 五 疱瘡絵と豆腐小僧
  疱瘡絵 豆腐小僧
 六 護符と神社姫
  護符 神社姫
 七 化物・妖怪を信仰すること
コラム・祟る「水子霊」(陳宣聿)…308
  中国における嬰児殺し 溺女を戒める善書 現代の「嬰霊」とその祟り
 一、上原大夫の歴史
 二、江戸期の上原大夫の職務
 三、近代の上原大夫の職務
 四、上原大夫の衰退
 おわりに

第3部 人のいとなみと怪異(木場貴俊)…321
村と怪異(木下浩)…326
 はじめに
 一 ツキノワ伝承の概要
 二 二箇の月の輪田
 三 現在も残るツキノワ
  事例1 真庭市(旧落合町)のツキノワ 事例2 新見市(旧神郷町)のツキノワ
 四 特異な立地のツキノワ

  事例3 岡山県北部の輪田 事例4 岡山県北部のイハイダ 事例5 岡山県中央部のツキノワ
 五 神聖な土地としてのツキノワ
  事例6 真庭市(旧落合町)のツキノワ(輪田)
 事例7 真庭市(旧落合町)のツキノワ
 六 禁忌や凶事が変遷していくツキノワ
  事例8 美咲町(旧中央町)のタケナリタンボ 事例9 鏡野町(旧富村)のツキノワ田
 七 江戸時代の地誌に見るツキノワ
  事例10 『山陽道美作記』の月の輪 事例11 『東作誌』の月の輪
 まとめにかえて

近世京都の小社と怪異(村上紀夫)…358
 一 土佐坊昌俊と冠者殿社
  四条京極の「怪異」 怪異譚の舞台は
 二 冠者殿社をめぐる人びと
  素戔嗚尊土佐坊昌俊 冠者殿社の再興 冠者殿社の由来記 吉田神道祇園社
 三 誓文返しの神由来
  誓文祓いのはじまり 
 四 十七世紀の冠者殿社
  四条御旅所神主津田兵部 津田兵部による誓文祓いの創始 津田兵部が手に入れた文書とは
 おわりに

怪物を食らう(木場貴俊)…379
 はじめにー貝原益軒の日記から
 一 さまざまな怪物を食らう
  人魚 雷獣 河童 三十三間堂の妖物 植物の奇譚
 二 江戸時代の肉食をめぐって
  肉食への忌避 獣肉料理 ももんじい 薬としての獣肉食 本草書に見る怪物
 三 怪物と薬食
  『一宵話』の異人 旧記 封 薬食と武勇
 おわりに
絵巻の中の神と「モノ」ー目に見えぬものをいかに描くか(山本陽子)…399
 はじめに
 一 「神」はどのように造形されたか

  見えない神々 神々の姿を視覚化する 一 「神」はどのように造形されたか
 二 「モノ」の姿はどのように記されたか

  見えない「モノ」を言葉で表す 特異な姿の「モノ」の記述
 三 絵巻に描かれた「モノ」
  平安時代の絵巻と「モノ」 
 四 多様な姿の「モノ」たち
  描かれ始める「モノ」 さまざまな形状の「モノ」の登場 「モノ」の形態はどこから
  「モノ」を主人公とする絵巻 鍋と釜をかぶつ「モノ」
 五 絵巻に描かれた神と「モノ」の効能
  見てはならない神を縁起絵巻に描く なぜ絵巻に神の顔を描かないか 「モノ」の絵姿を見る効用
コラム・石を降らせるのはなにものか?(化野燐)…424
 はじめに
 一 江戸の町には狐狸が降らせる
 二 鹿児島では人が振らせる
 三 祀られなくなった「お化け」たち

 おわりに

あとがき(大江篤)…438

執筆者一覧…441

『怪異学の地平』

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『怪異学の地平』

著者:東アジア恠異学会 編

出版地:京都

出版者:臨川書店

出版年:2018.12

大きさ容量等:343p ; 22m

目次

序文(西山克)…5

I . 〈怪異〉をめぐる言葉の定着
日本古代の「怪」と「怪異」ー「怪異」認識の定着(大江篤)…11
 はじめに
 一、『古事記』『日本書紀』にみる「怪」
 二、『万葉集』『風土記』にみる「怪」
 三、『続日本紀』以下五国史にみる「怪」
 むすびにかえてー「物怪」とは

異と常ー漢魏六朝における瑞祥災異と博物学(佐々木聡)…40
 はじめに
 一、漢代における災異説の展開
 二、「常」と「異」 
 三、祥瑞災異と博物学の関係性
 おわりに
日本古代の「祟」の成立とその周辺ー西大寺の建設をめぐって(久禮旦雄)…60
 はじめに
 一、「祟」をめぐる視点ー近年の研究動向から

 二、西大寺建立と神祇官による「祟」の主張
 三、西大寺建立と称徳天皇朝の「神護」の主張
 四、藤原永手の死をめぐってー『日本霊異記』と『続日本紀
 おわりにーさまざまな「語り」の中で

室町時代石清水八幡宮の怪異(山田雄司)…82
 はじめに
 一、石清水八幡宮における怪異
 二、対外危機と怪異
 三、将軍の死と怪異
 おわりに

近世怪異が示す射程ーひろたまさきの「妖怪」論を手掛かりにして(木場貴俊)…101
 はじめに
 一、ひろたまさきの「妖怪」論
 二、「妖怪」論の淵源
 三、近世怪異に関する論点

 おわりに

II . 〈異〉〈他〉の広がりと認識
妖怪・怪異・異界ー中世説話集を事例に(久留島元)…123
 一、「妖怪学」の成果
 二、「怪異学」からみる説話
 三、「怪異」認識の変化
 四、「異界」研究
 五、〈他〉の認識と怪学

 六、「異界」「他者」との交渉
キリシタン」の幻術ー『切支丹宗門来朝実記』系実録類と地域社会の「キリシタン」(南郷晃子)…146
 はじめにー「キリシタン」の伝承と旅人
 娯楽化する「キリシタン
 『切支丹宗門来朝実記』系実録写本について
 「キリシタン」の「手妻」
 米沢における「キリシタン」の幻術
 内部の「キリシタン

 来世をうつす鑑
 来朝記系実録類と伊吹モグサ
 路上の「キリシタン

 おわりに
六朝志怪における西方仏教説話の選択受容(佐野誠子)…168
 はじめに
 一、『観世音経』応験譚
 二、歴史化の欲求

 三、身近な人物としての受容
 おわりにー『観世音経』応験の枠を超えて
海の驚異ー異界・異類についての博物誌と物語をめぐって(近藤久美子)…187
 はじめに
 『被造物の驚異と万物の珍奇』にみられる海の異類
 『千一夜物語』の海人
 ホラーサーンのシャフルマーン王の物語
 陸のアブド・アッラーフと海のアブド・アッラーフの物語
 まとめにかえて

III . 〈神仏〉と〈化物〉の間
「妖怪」を選ぶ(化野燐)…217
 はじめに
 一、幽冥教
 二、神仏以外に人の怖るる物
 三、「妖怪」の種目
 四、「妖怪」の語彙
 五、「魔物」と「妖怪」
 六、「妖怪」の名彙
 七、『日本民俗学入門』の「妖怪」

 おわりに/『日本民俗学入門』の先へ
「件(くだん)」の成立ー近世の古代的言説「近世的神話」の中で(榎村寛之)…243
 一、件とは何か
 二、「件」が見られる河原巻物
 三、「件」が見られない河原巻物
 四、脱・陰陽道と近世「神話」

 五、予言獣「件」への道
 おわりに
護符信仰と人魚の効能(笹方政紀)…267
 はじめに
 一、予言獣の媒体と機能
  かわら版 護符・呪符
 二、人魚について
  先行する怪魚 人魚の効能
 三、神社姫の解体
  海神の使者と託宣 攘災と招福 疑似護符
 四、転写する呪い
 五、神社姫の展開
  大坂の姫魚 尾張の人魚
 六、神社姫以前と以後の予言
  馬の物云事 嘉永二年の人魚

 おわりに
蜘蛛塚考(村上紀夫)…286
 はじめに
 一、大禅院の大蜘蛛
 二、祇園社御旅所の記憶
 三、祇園社御旅所の近世
 おわりに

睡虎地秦簡『日書』詰篇にみる神・鬼・人ー『日書』の担い手を探る(大野裕司)…304
 一、問題の所在
 二、詰篇総論にみる『日書』の担い手の自己認識

 三、詰篇本文にみる『日書』の担い手の活動
 四、『日書』の担い手は「巫」か?

 

特別寄稿・値冷えの彼方と椽の下(京極夏彦)…327

あとがき …337

『怪異を媒介するもの』

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『怪異を媒介するもの(アジア遊学187)』

著者:東アジア恠異学会 編

出版地:東京

出版者:勉誠出版

出版年:2015.8

大きさ容量等:292p ; 21cm

目次

はじめに(大江篤)…4

【 I 記す・伝える】
霊験寺院の造仏伝承ー怪異・霊験譚の伝播・伝承(大江篤)…7
 はじめに
 一、霊験寺院・長谷寺の造仏伝承
 二、吉野比蘇寺における霹靂木の造仏ー媒介者としての法相宗
 三、稽文会・稽主勲の造仏伝承の天海
 四、長谷寺縁起から誓願寺縁起へー造仏伝承の変奏
 五、造仏伝承の近世的展開ーさかれんげ阿弥陀如来
 おわりに

風土記』と『儀式帳』ー恠異と神話の媒介者たち(榎村寛之)…24
 一、「神話」の文明化
 二、常陸の神話とその媒介者
 三、伊勢に派生する神々ー『儀式帳』の神話感覚 
 四、『出雲国風土記』に見る地域神話の吸収と再編
 五、神話の媒介者たち
コラム・境界を越えるものー『出雲国風土記』の鬼と神(久禮旦雄)…38
 一、『出雲国風土記』の「目ひとつの鬼」
 二、『風土記』は「神話」を語るか
 三、境界を越えるもの 
 四、「鬼」と「神」の間に
 おわりに
奈良時代・仏典注釈と霊異ー善珠『本願薬師経鈔』と「起屍鬼」(山口敦史)…43
 はじめにー死体蘇生の民俗から
 一、善珠『本願薬師経鈔』の「起屍鬼

 二、中国の「起屍鬼」関係記事
 三、日本における〈死体蘇生術〉の系譜
 おわりに
コラム・古文辞学から見る「怪」荻生徂徠『訳文筌蹄』『論語徴』などから(木場貴俊)…55
 はじめに
 一、『訳文筌蹄』に見る「怪」
 二、『論語』「子不語怪力乱神」の解釈をめぐって
 おわりに
「妖怪名彙」ができるまで(化野燐)…61
 はじめに
 一、「妖怪名彙」のカード
 二、“妖怪”カードの情報源
 三、情報源の推移

 四、「妖怪名彙」の連載と目的
 五、おわりに 環流する「妖怪名彙」

【 II 語る・あらわす】
メディアとしての能と怪異(久留島元)…75
 一、能のシステム
 二、「夢幻能」以前
 三、異類へのまなざし
 四、集積される知
江戸の知識人と〈怪異〉への態度ー“幽冥の談”を軸に(今井秀和)…82
 一、怪談文芸と〈怪異〉
 二、荻野梅塢と仙童寅吉の論争
 三、転生勝五郎ブームと知識人
 四、知識人のサロン的集団

 五、〈怪異〉への態度
 六、〈怪異〉と政治性
コラム・怪異が現れる場所としての軒・屋根・天井(山本陽子)…94
 一、身近な怪異の場所
 二、軒端の幽霊
 三、さかさまの幽霊
 四、屋根や軒から出現する理由
 五、軒や屋根に現れる怪異
 六、地上七・八尺という高さ
 七、失われる空間
クダンと見世物(笹方政紀)…100
 はじめに
 一、近世の動物見世物
 二、近代以降のクダンの見世物
 三、近世のクダンの見世物
 結びにかえて
コラム・霊を捉えるー心霊学と近代の作家たち(一柳廣孝)…115
 一、近代日本と心理学
 二、霊を捉えるー文学場での動向
「静坐」する柳田国男(村上紀夫)…119
 はじめに
 一、柳田国男と岡田虎二郎
 二、「岡田式静坐法」とは
 三、静坐と柳田民俗学
 おわりに

【 III 読み解く・鎮める】
遣唐使の慰霊(山田雄司)…131
 はじめに
 一、遣唐使死没者の慰霊
 二、仁明朝における災異
 三、帰朝できなかった遣唐使の思い

 おわりに
安倍吉平が送った「七十二星鎮」(水口幹記)…145
 一、藤原実資の移徙
 二、『鎮宅霊符縁起集説』と『太上秘法鎮宅霊符』
 三、「七十二星鎮」の記事
 四、「七十二星鎮」とは何か

 五、「七十二星鎮」のはじまり
 六、「七十二星鎮」のかたち
コラム・戸隠御師と白澤(熊澤美弓)…159
 一、戸隠神社と戸隠御師
 二、神獣・白澤
 三、戸隠の「白澤避怪図」
 四、白澤と戸隠御師
天変を読み解くー天保十四年白気出現一件(杉岳志)…164
 はじめに
 一、幕府天文方と幕閣
 二、陰陽頭と朝廷
 三、藩の天文家と為政者・当局者
 四、白澤と戸隠御師
 五、江戸市中の人々
 おわりに

コラム・陰陽頭土御門晴親と「怪異」(梅田千尋)…177
 はじめに
 一、土御門晴親の「怪異」
 二、土御門晴親とその時代
吉備の陰陽師 上原大夫(木下浩)…182
 はじめに
 一、上原大夫の歴史
 二、江戸期の上原大夫の職務
 三、近代の上原大夫の職務
 四、上原大夫の衰退
 おわりに

【 IV 辿る・比べる】
王充『論衡』の世界観を読むー災異と怪異、鬼神をめぐって(佐々木聡)…189
 はじめに
 一、祥瑞災異思想と天人相関
 二、王充『論衡』の鬼神論
 三、『論衡』に見える後漢代の世界観
 むすびにかえて
中国の仏教者と予言・讖詩ー仏教流入期から南北朝時代まで(佐野誠子)…206
 一、古代中国における予言と予言者、そして僧侶
 二、後趙の仏図澄
 三、梁の宝誌
 四、北魏の霊遠
 五、北周の衛元嵩
 六、北斉の恵炤
 七、隋の尼智仙

コラム・中国の怪夢と占夢(清水洋子)…221
 はじめに
 一、「悪夢」について
 二、「怪夢」について
 おわりに
中国中世における陰陽家の第一人者ー蕭古の学と術(余欣、翻訳:佐々木聡・大野裕司)…227
 はじめに
 一、陰陽五行学の理論の系譜についての再検討

 二、蕭古の陰陽五行学の論理と実践
 (1)鼠妖(鼠の怪異)
 (2)回風(つむじ風)
 (3)桃湯と葦火
 (4)謝土と置五帝坐、蝦蟆(カエル)
 四、白澤と戸隠御師

台湾道教の異常死者救済儀礼(山田明広)…249
 はじめに
 一、正常死と異常死
 二、道教の功徳儀礼
 (1)行われる機会
 (2)功徳儀礼の構成例
 (3)主要儀式の意義・効能
 三、亡者の死因とそれに対応する死者救済の儀礼

 四、異常死者救済儀礼の実際
 おわりに
コラム・琉球の占術文献と占者(山里純一)…259
 はじめに
 一、「時双紙」と「砂川双紙」
 二、「観音霊籤」と使用者
 三、易占書と使用者
 四、朝鮮の占書の移入
 おわりに
コラム・韓国の暦書の暦注(全勇勲)…265
 はじめに
 一、朝鮮の暦書
 二、暦日と暦注
 三、暦注の記入法
 四、節日に付けられる暦注
 五、朝鮮の暦書における暦注の変化
アラブ地域における夢の伝承(近藤久美子)…272
 一、古代の夢伝承
 二、巫覡による夢の予言
 三、共同体の長による夢解釈
 四、イブン・シーリーンの夢解釈
 五、説話集にみられる王と夢解釈
 六、ハールーン・アッラシードの見た夢

 おわりに
コラム・〈驚異〉を媒介する旅人(山中由里子)…287
 はじめに
 一、驚異への関心
 二、驚異の目撃者
 三、媒介者としての旅人
 四、アレクサンドロスが見た東方の驚異

『怪異学入門』

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『怪異学入門』

著者:東アジア恠異学会 編

出版地:東京

出版者:岩田書院

出版年:2012.4

大きさ容量等:155p ; 21cm

目次

はじめに(大江篤)…1

特別寄稿 『怪異学入門』発刊によせて(京極夏彦) …4

第一章 怪異学を語る
 座談会「怪異学の成果と課題」(大江篤・榎村寛之・化野燐、司会:久禮旦雄)…12 
  1 東アジア恠異学会との出会い
   問題意識の共有 「言葉」の解体 第一節 「フシギなコト」はなぜ記録される
  2 王権と怪異ー恠異学会の成果をめぐって(1)
   『怪異学の可能性』の成果 天人相関説と「祟」
  3 怪異の流出ー恠異学会の成果をめぐって(2)
   拡散する「祟」と怪異 
  4 怪異を語る知識人たちの系譜
   近世知識人と化物 民俗社会の再解釈 「妖怪」成立の前提

  5 これからの怪異学、参加者に望むこと 
   4 怪異を語る知識人たちの系譜
 コラム【柳田國男】(大江篤)…45
 コラム【亀】(島田尚幸)…46
 コラム【縁起】(鬼頭尚義)…47

第二章 怪異学を学ぶ
 古代史料(史書・法典)と怪異(久禮旦雄)…50
  災異から恠異へ
  『日本書紀』『古事記』と神話・神祇
  律令と「祟」「妖言」
  『続日本紀』以後の国史三代格式と託宣・「物恠」

 コラム【神社】(榎村寛之)…64
 説話集と怪異(久留島元)…65
  染殿后説話
  『善家秘記』
  「天宮」の謎
  『今昔物語集』の「天狗説話」

  「記」から「物語」へ
 コラム【志怪】(佐野誠子)…78
 古記録と怪異(高谷知佳)…79
  古代から中世へ
  「古記録」とは
  古記録を取り巻くメディア
  室町の政治史と怪異
  動物や鳴動の風聞ー中世の情報と怪異 I
  将軍の車と天狗ー中世の情報と怪異 II
  るつぼへの再発信ー中世の情報と怪異 III
 コラム【城】(南郷晃子)…94
 近世学芸と怪異(木場貴俊)…95
  天と人と
  怪力乱神を語る儒者
  妖は人に由りて興る
  仏教の対応
  怪異の本草
  生類としての怪異
  怪異と法
  おわりに
 コラム【疫病神】(笹方政紀)…108
 中国社会と怪異(佐々木聡)…109
  董仲舒と災異説
  『漢書』五行志と災異説のその後
  災異には鬼神がいない?
  鬼神と志怪書
  鬼神と淫祀の流行
  王充鬼神論
  鬼神を語る宗教
  道教経典の鬼神
  『白沢図』と辟邪文化
  『白沢図』をめぐる辟邪文化の受容
 コラム【白澤】(熊澤美弓)…124

第三章 怪異を辿る
 インタビュー「怪異学の軌跡」(西山克、聞き手:高谷知佳)…126
  1 「歴史の中の神霊」への関心
  2 東アジア恠異学会発足をめぐって
  3 恠異学会の先蹤
  4 今後の恠異学会に寄せて
 コラム【化物】(木場貴俊)…142
 コラム【妖怪】(化野燐)…143
 コラム【魔】(化野燐)…144

さらに学びたい人のために …145

『怪異学の可能性』

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『怪異学の可能性』

著者:東アジア恠異学会 編

出版地:京都

出版者:角川書店

出版年:2009.3

大きさ容量等:498p ; 19cm

目次

序章「怪異学」の目指すもの(榎村寛之) …7
  はじめに
  第一節 「怪異学」と社会
  第二節 「怪異学」と歴史学
  第三節 「怪異」を超えて
  おわりに
第一部 律令国家の形成と「フシギ」の認識史 …17
 第一章 奈良・平安時代の人々とフジキなコト(榎村寛之) …18 
  はじめに
  第一節 「フシギなコト」はなぜ記録される
  第二節 奈良・平安時代の「フシギなコト」と社会の変革
   ①新たな神の誕生 ②新たな技術が社会を動かす ③国家の説明体制が確立される
  第三節 「変」な「フシギなコト」たちー「恠異」の定着

   ①『類聚符宣抄』に見る「恠異」 ②十一世紀の伊勢外宮倒壊事件と恠異 ③十二世紀の恠異ー『本朝世紀』に見る
  おわりに
 第二章 「祟り」「怨霊」、そして「御霊」ー神霊を語る者(大江篤) …56
  はじめに
  第一節 神の「祟り」
   ①「祟り」は神の祭祀要求 ②卜部と神の「祟り」
  第二節 「祟り」から「怨霊」へー早良親王の霊

   ①早良親王の「祟り」 ②早良親王の「怨霊」
  第三節 「怨霊」を語る者ー法相宗
  第四節 空海最澄の供養願文
  第五節 「祟り」「怨霊」と平安貴族社会ー十世紀以降
   ①「祟り」と陰陽師 ②語り出す「怨霊」
  むすびにかえてー貞観御霊会と比良山
 第三章 「恠異学」の先人たちー古代史・文化史・王権論(久禮旦雄) …92
  はじめに
  第一節 文化史研究と「フシギなコト」(1)ー西田直二郎喜田貞吉
  第二節 文化史研究と「フシギなコト」(2)ー京大文化史の開花
  第三節 古代国家論と「フシギなコト」
  おわりにー「怪異学」の未来

第二部 中世多元化する国家・社会と「フシギ」の展開史 …123
 第一章 鎌倉時代の怪異(山田雄司) …124
  はじめに
  第一節 朝廷周辺の怪異
   ①廟での怪異 ②二十二社での怪異 ③寺院等での怪異
  第二節 幕府周辺の怪異

   ①鎌倉の陰陽師 ②鶴岡八幡宮での怪異ー鳩のお告げ ③鷺の怪異 ④幕府関連神社での怪異
  第三節 戦乱と怪異

   ①承久の乱と怪異 ②宝治合戦と怪異ー黄蝶の群飛 ③蒙古襲来と怪異
  第四節 怪異の否定
   ①専修念仏による怪異否定 ②専修念仏への攻撃 ③『徒然草』の目
  おわりに

 第二章 室町時代宮廷社会の精神史(西山克) …152
  はじめに
  第一節 称光天皇の戸惑い
  第二節 正親町三条尹子の憂鬱
  第三節 裏松重子の企み
  おわりに
 第三章 室町王権と都市の怪異ー精神障害と怪異(高谷知佳) …189
  第一節 室町王権と怪異
   ①古代から中世へ ②室町の王権・宗教・怪異
  第二節 正親町三条尹子の憂鬱

   ①不安の再生産 ②室町都市のメカニズム
  第三節 裏松重子の企み

   ①応仁の乱インパクト ②戦火の参詣 ③参詣は不吉か ④首都を維持するために
  第四節 都市の王権と怪異
   ①北野の鐘鋳造 ②参詣の場の機能ー都市社会の再建 ③参詣の場のリスク対策ー勧進をめぐって ④怪異の行方
  おわりに

 コメント 能の「不思議」ー能における霊魂観(永原順子) …189
第四章 西洋中世史研究と怪異学ー前近代史の共通言語を目指して(黒川正剛) …246
  第一節 西洋史研究と怪異
  第二節 脅威の世界ーメルヴェイユー、そしてイマジネール
  第三節 驚異と権力
  第四節 怪異学の共通源吾の在り処を求めて

第三部 近世社会と怪異 …265
 第一章 近世社会と怪異 近世社会の成立と近世的怪異の形成(木場貴俊) …266
  はじめに
  第一節 近世の怪異観ー天譴論の思想と実態

  第二節 天譴論を語る者
  第三節 近世の怪異観ー天運論
  第四節 近世の怪異観ー人心
  第五節 一八世紀以降の儒者と怪異
  第六節 近世の法と怪異ー『本朝神社考』から
  第七節 近世の法と怪異ー幕府や藩の法令から

  おわりに
 第二章 近世・近代の「怪異」と国家/社会(戸田靖久) …301
  はじめに
  第一節 後鳥羽院の供飯ー江戸前期の「怪異」
   ①中世期の水無瀨御影堂と「怪異」 ②新たな「怪異」の登場 ③近世初期における「怪異」解釈の特質
  第二節 後醍醐天皇陵の鳴動ー幕末維新期の「怪異」

   ①後醍醐天皇陵の鳴動 ②後醍醐天皇陵と「文久の修陵」 ③陵墓鳴動の解釈 ④「戦う天皇」後醍醐 ⑤幕末期における「怪異」解釈の特質
  第三節 伊勢神宮鳥居転倒事件ー「怪異」の終焉

   ①伊勢内宮での“異変” ②明治天皇東幸問題と「怪異」解釈 ③岩倉具視の決断 ④「怪異」の否定がもたらしたもの
  おわりに

私たちの「怪異」現代の中の「怪異」と怪異(京極夏彦) …335
  長い前置き
  「怪異」の三類型
  様々な「怪異」
  「怪異」と「恠異」
  取り敢えずのまとめ
  「妖怪」と「怪異」
  「怪しい出来事」と「不思議なこと」
  「科学」と「怪異」
  「オカルト」と「怪異」
  「奇跡」と「怪異」

  現代の中の「怪異」

参考文献 …383

あとがき(大江篤) …391

『亀卜』

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『亀卜:歴史の地層に秘められたうらないの技をほりおこす』

著者:東アジア恠異学会 編

出版地:京都

出版者:臨川書店

出版年:2006.5

大きさ容量等:265p ; 19cm

目次

序文(西山克) …1

I章・日本古代史
亀卜と怪異—媒介者としての卜部(大江篤) …7
  一、はじめに
  二、怪異の認識
  三、亀卜の技法
  四、卜部と占部
  五、神祇官の卜部の出身地
  六、卜部と王権
  七、おわりに

コラム・斎宮と亀卜(榎村寛之) …48
  一、延喜斎宮式に見る「亀」 二、斎宮式における「卜」
コラム・吉田家の出自(岡田莊司) …54
  神祇官卜部と平麻呂 宮主と「御体御卜」(おおみまのみうら) 亀卜道と陰陽道

II章・中国古代史
殷代の甲骨による占いと卜辞(浅原達郎) …59
  一、材料
   甲骨とは 亀の種類
  二、占卜のプロセス 加工・鑽鑿・焼灼
   亀の入手 亀甲の加工 鑽鑿 焼灼
  三、卜兆の読み取り方
   卜辞 命辞の性格 卜兆しと吉凶
  四、殷式占卜の流れ
コラム・中国六朝の『亀経』と神祇官卜部の亀卜法(北條勝貴) …98

III章・考古学
考古資料から見た古代の亀卜・卜甲と卜部(笹生衛) …103
  一、はじめに
  二、卜甲の出土例
   ①出土卜甲の特徴と卜占方法 ②年代的な傾向 ③出土遺稿の特徴 ④出土卜甲の分布
  三、卜骨・卜甲の変遷と背景
  四、卜部の祭祀と、亀卜道宗家・卜部氏の成立
  五、まとめ 

コラム・中世の亀卜と卜部(西岡芳文) …134
  中世の卜部をめぐって 卜部の呪文「トホカミエミタメ」
コラム・皇統と亀(西山克) …138
コラム・中世文学における亀(田中貴子) …142

IV章・民俗学
ウミガメ捕獲習俗からみた卜甲調達の地域と技術(藤井弘章) …145
  はじめに
  一、古代・中世におけるウミガメ捕獲
  二、近世・近代におけるウミガメ捕獲
   ①対馬壱岐、九州北部 ②四国南西部 ③紀州 ④遠州灘 ⑤伊豆諸島 ⑥小笠原諸島
  三、民俗からみたウミガメ捕獲方法の地域差
   ①南西諸島 ②九州南部 ③九州北部 ④四国南部 ⑤紀伊半島南部 ⑥伊豆諸島 ⑦小笠原諸島
  まとめ

コラム・彌彦神社の卜甲と文書(椙山林繼) …183

V章・動物学
動物学からみた「亀」卜考(島田尚幸) …187
  はじめに
  亀とは
  防御型の動物
  背甲と腹甲
  カメ類とその現在
  亀卜に使われるカメ
  どの部分を用いていたか
  卜甲への加工
  おわりに

コラム・卜甲に関する文献に対する生物学的解釈(亀崎直樹) …221
  はじめに

VI章・実験レポート
灼甲の実験ー『対馬亀卜談』の方法(戸田靖久) …225
  一、はじめに
  二、亀卜書『対馬亀卜談』について
   (一)『対馬亀卜談』と岩佐氏
   (二)『対馬亀卜談』の執筆動機
   (三)灼甲実験と歴史学
  三、灼甲実験計画の発動
   (一)亀卜再現シーンの舞台裏
   (二)歴史学・動物学からみる亀卜
   (三)亀卜書にみる亀甲加工法
   (四)亀卜シンポジウムの開催
  四、灼甲実験始末記【プレ実験編】
   (一)亀卜とウミガメ
   (二)実験準備完了
   (三)卜甲の作成
   (四)灼甲実験と問題点
  五、灼甲実験始末記【本実験編】
   (一)共同研究会プログラム
   (二)本実験の概要と注目点
   (三)本実験の開始
  六、おわりに

特別寄稿・鈴鹿家亀卜関係資料(加茂正典) …252
  亀甲 卜串

「亀卜」関係文献目録(稿) …259

あとがき(大江篤) …263

執筆者一覧 …433

『怪異学の技法』

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『怪異学の技法』

著者:東アジア恠異学会 編

出版地:京都

出版者:臨川書店

出版年:2003.11

大きさ容量等:437p ; 22cm

目次

序章 怪異のポリティクス(西山克) …7

【怪】
モノ化するコト—怪異と妖怪を巡る妄想(京極夏彦) …17
  はじめに〜怪異を語る前に〜
  怪異研究という流行、妖怪研究という流行
  怪異というラベル、妖怪というラベル
  怪異というコト、妖怪というモノ
  モノからコトへ、コトからモノ
  モノ化していくコト、妖怪化して行く怪異
  怪異に還元される妖怪、妖怪に解体される怪異
  おわりに〜やはり怪異を語る前に〜

怪異と穢との間—寛喜二年石清水八幡宮落骨事件(山田雄司) …47
  はじめに
  一、事件の発生
   落骨事件の概要 平野社の位置づけ
  二、杖議
   公卿たちの主張 躁病としての石清水八幡宮
  三、軒廊御卜
   軒廊御卜 寮占 怪異について 官卜 官宣旨
  四、五体不具の穢
   穢に関する規定の変遷 石清水八幡宮の対応
  五、むすびにかえてー事件のその後
   後堀河天皇の対応 さらなる地平へ

西欧近世における〈怪異〉—驚異と神について(黒川正剛) …69
  一、怪異と驚異ー言葉の問題について
   怪異か驚異か 西欧近世と驚異 驚異研究の現状 本稿の目的
  二、近世ー増殖する「驚異」の時代
   驚異のイメージ 驚異増殖の原因 驚異の解釈
  三、驚異と神ーアンブロワーズ・パレ著『怪異と驚異について』の検討
   パレという人間 ラヴェンナの怪物 奇形について 異形の種族 彗星について 神と怪異
  四、怪異と宗教・世界観ー日本と西欧
   怪異と世界観 比較の視点

【怨】
川原寺と怨霊—伊予親王の霊をめぐって(大江篤) …95
  一、王権と怨霊
   問題の所在
  二、伊予親王事件の真相
   伊予親王 事件の経過 事件の真相 
  三、伊予親王藤原吉子を慰撫する
   伊予親王は冤罪であった 慰撫の方法 慰撫の時期とその背景 大同五年の慰撫 慰撫と川原寺
  四、平安遷都後の川原寺
   川原寺の創建 地位の低下と復活 川原寺僧侶
  五、怨霊を語る法相宗
   平安初期の法相宗 善珠と怨霊 法相宗と阿刀氏 阿刀氏と伊予親王
  六、おわりに
   川原寺の創建 地位の低下と復活 川原寺僧侶

刑部僧正長厳の怨霊(徳永誓子) …117
  はじめに
  一、長厳と後鳥羽院
   生前の長厳 怨霊の長厳 後鳥羽員の御使
  二、後鳥羽院と熊野
   後鳥羽院怨霊の祈請 後鳥羽院の近親者と熊野 上皇の守護神
  三、長厳の法系
   二人の東下り僧ー長能と道朝 祖師の供養
  むすびにかえて

【祀】
平安宮の鬼と宮廷祭祀(榎村寛之) …135
  一、仁和の「鬼」の記録
   深夜の平安宮で起きた怪異事件 今昔物語と比べると 『三代実録』の記述に見る矛盾点 この事件はデマか
  二、「鬼が女を喰った」事件の背景
   仁和三年の大事件 光孝天皇の死
  三、平安時代初期の「鬼」
   鬼の定義と実態 楢磐嶋が会った鬼
  四、殺人を犯す「鬼」と「神」ー神による巫女殺し
   人を食う鬼 人を食う「神」
  五、鬼と山人、巫女と炊く女
   祭祀の場の「山人」 山人とは何か 山人の役割
  六、怪異現象と宇多天皇の即位
   鬼の出る空間としての平安宮 宇多天皇の即位の意味
  おわりに 

賀茂別宮と徳大寺家—家と怪異(佐伯智広) …159
  はじめに
  一、瑞祥と賀茂社の勧請
   鳥羽院誕生と瑞祥 鳥羽院出生当時の王家と閑院流 賀茂社の勧請
  二、賀茂社から賀茂別宮へ
   賀茂別宮の具体像 賀茂別宮と賀茂別雷社 「別宮」とは 「別宮」への転化 天皇・摂政の御祈禱所に
  三、もう一つの怪異
   賀茂大明神、日本国を棄て他所に渡る 徳大寺家の思惑 
「繁昌神社」考—洛中小社研究序説(村上紀夫) …179
  はじめに
   これまでの神社研究が見落としたもの 都市と小社をめぐる研究
  一、「繁昌神社」素描
  二、「繁昌神社」変遷史
   動かない死体と小社 中世後期の社 班女から繁昌へ 繁昌神社の祭り
  三、「繁昌神社」の背景にあるもの
   繁昌神社をめぐる地理的景観 秀吉による京都改造と小社 繁昌神社の変化を惹起したもの 繁昌神社の変わらないもの
  おわりに

絵師としての小野篁(黒田智) …199
  一、藤原鎌足像の絵師
   藤原鎌足の肖像 小野篁が描いた鎌足像 
  二、小野篁の歴史的イメージ
   小野篁をめぐるミステリアスな伝承 矢田寺縁起系地蔵造像説話
  三、地蔵を描く小野篁
   画譜・地誌類のなかの絵師伝承 多武峰の勝軍地蔵信仰 
  四、嵯峨天皇期の記憶
   造像伝承を伝える三つの地域 同時代として嵯峨天皇
  五、宝物となった鎌足
   脚色された宝物伝承
  六、多武峰の宝物
   近世多武峰の六つの宝物 資金源としての宝物
  七、おわりに
   宝物という物語

【象】
熊野曼荼羅に顕れた雷電神(梅沢恵) …221
  一、はじめに
   異形の護法 
  二、姿の諸相ー図像の揺らぎ
   熊野曼荼羅とは 『長秋記』の記述 礼殿執金剛の諸相
  三、礼殿という空間
   礼殿の機能 礼殿の金剛童子 
  四、類似する像ー執金剛か金剛童子
   広義の執金剛 観音三十三応身としての執金剛 金剛童子蔵王権現・執金剛同体説
  五、雷電神の出現
   なぜ太鼓を持つのか 雷神図像の系譜 
  六、新たな意味づけー東国の「ライデン」
   伊豆山の雷電神 仁和寺における解釈
  七、おわりに
   異形の図像学の可能性

「異形賀茂祭図巻」と「百鬼夜行絵巻」(田中貴子) …247
  はじめに
  一、「異形賀茂祭図巻」の成立と田中訥言
   田中訥言というひと 妙法院宮と「図巻」 
  二、「文永本賀茂祭草子」との関連
   「文永本賀茂祭草子」とは 「文永本」と「図巻」の関係
  三、「百鬼夜行絵巻」との関係
   訥言の工夫 牛車の謎
  おわりに

近世書物にみる胎児観—女性用書物を中心に(米津江里) …265
  はじめに
  一、元禄期前後の胎児観
   女書にみる胎児観〜産書の場合〜 女書にみる胎児観〜実用書物の場合〜 文学作品にみる胎児観 
  二、中・後期の胎児観
   女書における変遷 文学作品にみえる仏具説の変遷
  おわりに

【性】
生首をいとおしむ女—偏愛奇談の時代(堤邦彦) …291
  一、「淀の成敗」
   姦婦と生首 
  二、「奇異ノ儀にあらずといへども」
   磔刑の女 偏愛奇談の源流 仏教唱導から怪異文芸へ
  三、執着の心と蛇
   心蛇の変 懺悔する蛇身 鴛鴦の愛欲 
  四、「繋念無量劫」ーなぜ女は化けるのか
   復讐する婦霊 「仏教」のようなもの 生きていた首
  五、人は化け物、恋も化け物
   魔境は心のなかに 閨の薄暗がりで 鱗の生えた淫女
  六、偏愛をみつめる人々
   人妖論 偏愛奇談のゆくえ

林羅山と怪異(木場貴俊) …321
  はじめに
  一、林羅山の怪異観
   「子、不語怪力乱心」と羅山 怪異譚を語る背景にあったもの
   羅山が語る怪異譚とは 怪異譚に込められた訓戒 怪異譚に付けられた注釈 
  二、羅山が怪異に及ぼした影響
   羅山と仏教怪異譚ー『奇異雑談集』との比較 産女と姑獲鳥 怪異から見える三教一致 
   仏教の儒教説摂取について 十七世紀後半以降の羅山の影響(文芸)
   十七世紀後半以降の羅山の影響(伝承・思想)
  おわりに

【顕】
物言う墓(西山克) …347
  一、はじめに 
  二、水無瀨鳴動
   後鳥羽院の安息所 水無瀨鳴動と室町殿
  三、多田院鳴動
   清和源氏の始祖 死霊への贈位 
  四、おわりに
   神霊が王を譴責する 吉田兼倶の登場

関帝廟という装置—関聖帝君の顕聖との関わりを中心に(太田出) …373
  はじめに
  一、現代中国の関帝廟
   詔安県の関帝廟ー関聖帝君と倭寇 劉海市の赤嶺関帝廟ー現代中国における関聖帝君の顕聖
  二、記憶・伝承装置としての関帝廟
   関聖帝君の顕聖①ー明代正徳年間、劉六・劉七の乱の事例
   関聖帝君の顕聖②ー清代乾隆年間、清水教の乱の事例
   関聖帝君の顕聖③ー清代広東省韶州府の事例
  三、顕聖する空間としての関帝廟
   関聖帝君の顕聖④ー清代嘉慶年間、天理教の乱の事例
   関聖帝君の顕聖⑤ー清代咸豊年間、太平天国・捻軍の事例
   関聖帝君の顕聖⑥ー王朝国家・反乱者集団・一般民衆と関聖帝君
  おわりに—関帝廟を通してみた王朝国家と関帝信仰

安史の乱異聞(戸田靖久) …393
  はじめに
  一、玄宗御製碑はなぜ言葉を発したか
   玄宗御製碑と立碑空間 玄宗御製碑の神秘性 黄巣の乱唐王朝 伝えられた「記憶」と怪異記事
  二、石言と怪異解釈
   石言とはなにか 石鼓が鳴れば… 石言怪異と王朝滅亡 安史の乱異聞
  三、朝鮮における「安史の乱異聞」
   望徳寺仏塔動く 仏塔をめぐる中国の怪異記事 新羅王朝と皇龍寺九層仏塔 朝鮮における「安史の乱異聞」
  おわりに

あとがき(大江篤) …423
  「怪異学」事始 「怪異」という言葉 平安京の「怪異」 「怪異」と中世王権 
  近世知識人と「怪異」 「怪異」の比較研究 近・現代の「怪異」 「怪異学」の出発

東アジア恠異学会の軌跡(戸田靖久) …430

執筆者一覧 …433