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『怪異学の技法』

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『怪異学の技法』

著者:東アジア恠異学会 編

出版地:京都

出版者:臨川書店

出版年:2003.11

大きさ容量等:437p ; 22cm

目次

序章 怪異のポリティクス(西山克) …7

【怪】
モノ化するコト—怪異と妖怪を巡る妄想(京極夏彦) …17
  はじめに〜怪異を語る前に〜
  怪異研究という流行、妖怪研究という流行
  怪異というラベル、妖怪というラベル
  怪異というコト、妖怪というモノ
  モノからコトへ、コトからモノ
  モノ化していくコト、妖怪化して行く怪異
  怪異に還元される妖怪、妖怪に解体される怪異
  おわりに〜やはり怪異を語る前に〜

怪異と穢との間—寛喜二年石清水八幡宮落骨事件(山田雄司) …47
  はじめに
  一、事件の発生
   落骨事件の概要 平野社の位置づけ
  二、杖議
   公卿たちの主張 躁病としての石清水八幡宮
  三、軒廊御卜
   軒廊御卜 寮占 怪異について 官卜 官宣旨
  四、五体不具の穢
   穢に関する規定の変遷 石清水八幡宮の対応
  五、むすびにかえてー事件のその後
   後堀河天皇の対応 さらなる地平へ

西欧近世における〈怪異〉—驚異と神について(黒川正剛) …69
  一、怪異と驚異ー言葉の問題について
   怪異か驚異か 西欧近世と驚異 驚異研究の現状 本稿の目的
  二、近世ー増殖する「驚異」の時代
   驚異のイメージ 驚異増殖の原因 驚異の解釈
  三、驚異と神ーアンブロワーズ・パレ著『怪異と驚異について』の検討
   パレという人間 ラヴェンナの怪物 奇形について 異形の種族 彗星について 神と怪異
  四、怪異と宗教・世界観ー日本と西欧
   怪異と世界観 比較の視点

【怨】
川原寺と怨霊—伊予親王の霊をめぐって(大江篤) …95
  一、王権と怨霊
   問題の所在
  二、伊予親王事件の真相
   伊予親王 事件の経過 事件の真相 
  三、伊予親王藤原吉子を慰撫する
   伊予親王は冤罪であった 慰撫の方法 慰撫の時期とその背景 大同五年の慰撫 慰撫と川原寺
  四、平安遷都後の川原寺
   川原寺の創建 地位の低下と復活 川原寺僧侶
  五、怨霊を語る法相宗
   平安初期の法相宗 善珠と怨霊 法相宗と阿刀氏 阿刀氏と伊予親王
  六、おわりに
   川原寺の創建 地位の低下と復活 川原寺僧侶

刑部僧正長厳の怨霊(徳永誓子) …117
  はじめに
  一、長厳と後鳥羽院
   生前の長厳 怨霊の長厳 後鳥羽員の御使
  二、後鳥羽院と熊野
   後鳥羽院怨霊の祈請 後鳥羽院の近親者と熊野 上皇の守護神
  三、長厳の法系
   二人の東下り僧ー長能と道朝 祖師の供養
  むすびにかえて

【祀】
平安宮の鬼と宮廷祭祀(榎村寛之) …135
  一、仁和の「鬼」の記録
   深夜の平安宮で起きた怪異事件 今昔物語と比べると 『三代実録』の記述に見る矛盾点 この事件はデマか
  二、「鬼が女を喰った」事件の背景
   仁和三年の大事件 光孝天皇の死
  三、平安時代初期の「鬼」
   鬼の定義と実態 楢磐嶋が会った鬼
  四、殺人を犯す「鬼」と「神」ー神による巫女殺し
   人を食う鬼 人を食う「神」
  五、鬼と山人、巫女と炊く女
   祭祀の場の「山人」 山人とは何か 山人の役割
  六、怪異現象と宇多天皇の即位
   鬼の出る空間としての平安宮 宇多天皇の即位の意味
  おわりに 

賀茂別宮と徳大寺家—家と怪異(佐伯智広) …159
  はじめに
  一、瑞祥と賀茂社の勧請
   鳥羽院誕生と瑞祥 鳥羽院出生当時の王家と閑院流 賀茂社の勧請
  二、賀茂社から賀茂別宮へ
   賀茂別宮の具体像 賀茂別宮と賀茂別雷社 「別宮」とは 「別宮」への転化 天皇・摂政の御祈禱所に
  三、もう一つの怪異
   賀茂大明神、日本国を棄て他所に渡る 徳大寺家の思惑 
「繁昌神社」考—洛中小社研究序説(村上紀夫) …179
  はじめに
   これまでの神社研究が見落としたもの 都市と小社をめぐる研究
  一、「繁昌神社」素描
  二、「繁昌神社」変遷史
   動かない死体と小社 中世後期の社 班女から繁昌へ 繁昌神社の祭り
  三、「繁昌神社」の背景にあるもの
   繁昌神社をめぐる地理的景観 秀吉による京都改造と小社 繁昌神社の変化を惹起したもの 繁昌神社の変わらないもの
  おわりに

絵師としての小野篁(黒田智) …199
  一、藤原鎌足像の絵師
   藤原鎌足の肖像 小野篁が描いた鎌足像 
  二、小野篁の歴史的イメージ
   小野篁をめぐるミステリアスな伝承 矢田寺縁起系地蔵造像説話
  三、地蔵を描く小野篁
   画譜・地誌類のなかの絵師伝承 多武峰の勝軍地蔵信仰 
  四、嵯峨天皇期の記憶
   造像伝承を伝える三つの地域 同時代として嵯峨天皇
  五、宝物となった鎌足
   脚色された宝物伝承
  六、多武峰の宝物
   近世多武峰の六つの宝物 資金源としての宝物
  七、おわりに
   宝物という物語

【象】
熊野曼荼羅に顕れた雷電神(梅沢恵) …221
  一、はじめに
   異形の護法 
  二、姿の諸相ー図像の揺らぎ
   熊野曼荼羅とは 『長秋記』の記述 礼殿執金剛の諸相
  三、礼殿という空間
   礼殿の機能 礼殿の金剛童子 
  四、類似する像ー執金剛か金剛童子
   広義の執金剛 観音三十三応身としての執金剛 金剛童子蔵王権現・執金剛同体説
  五、雷電神の出現
   なぜ太鼓を持つのか 雷神図像の系譜 
  六、新たな意味づけー東国の「ライデン」
   伊豆山の雷電神 仁和寺における解釈
  七、おわりに
   異形の図像学の可能性

「異形賀茂祭図巻」と「百鬼夜行絵巻」(田中貴子) …247
  はじめに
  一、「異形賀茂祭図巻」の成立と田中訥言
   田中訥言というひと 妙法院宮と「図巻」 
  二、「文永本賀茂祭草子」との関連
   「文永本賀茂祭草子」とは 「文永本」と「図巻」の関係
  三、「百鬼夜行絵巻」との関係
   訥言の工夫 牛車の謎
  おわりに

近世書物にみる胎児観—女性用書物を中心に(米津江里) …265
  はじめに
  一、元禄期前後の胎児観
   女書にみる胎児観〜産書の場合〜 女書にみる胎児観〜実用書物の場合〜 文学作品にみる胎児観 
  二、中・後期の胎児観
   女書における変遷 文学作品にみえる仏具説の変遷
  おわりに

【性】
生首をいとおしむ女—偏愛奇談の時代(堤邦彦) …291
  一、「淀の成敗」
   姦婦と生首 
  二、「奇異ノ儀にあらずといへども」
   磔刑の女 偏愛奇談の源流 仏教唱導から怪異文芸へ
  三、執着の心と蛇
   心蛇の変 懺悔する蛇身 鴛鴦の愛欲 
  四、「繋念無量劫」ーなぜ女は化けるのか
   復讐する婦霊 「仏教」のようなもの 生きていた首
  五、人は化け物、恋も化け物
   魔境は心のなかに 閨の薄暗がりで 鱗の生えた淫女
  六、偏愛をみつめる人々
   人妖論 偏愛奇談のゆくえ

林羅山と怪異(木場貴俊) …321
  はじめに
  一、林羅山の怪異観
   「子、不語怪力乱心」と羅山 怪異譚を語る背景にあったもの
   羅山が語る怪異譚とは 怪異譚に込められた訓戒 怪異譚に付けられた注釈 
  二、羅山が怪異に及ぼした影響
   羅山と仏教怪異譚ー『奇異雑談集』との比較 産女と姑獲鳥 怪異から見える三教一致 
   仏教の儒教説摂取について 十七世紀後半以降の羅山の影響(文芸)
   十七世紀後半以降の羅山の影響(伝承・思想)
  おわりに

【顕】
物言う墓(西山克) …347
  一、はじめに 
  二、水無瀨鳴動
   後鳥羽院の安息所 水無瀨鳴動と室町殿
  三、多田院鳴動
   清和源氏の始祖 死霊への贈位 
  四、おわりに
   神霊が王を譴責する 吉田兼倶の登場

関帝廟という装置—関聖帝君の顕聖との関わりを中心に(太田出) …373
  はじめに
  一、現代中国の関帝廟
   詔安県の関帝廟ー関聖帝君と倭寇 劉海市の赤嶺関帝廟ー現代中国における関聖帝君の顕聖
  二、記憶・伝承装置としての関帝廟
   関聖帝君の顕聖①ー明代正徳年間、劉六・劉七の乱の事例
   関聖帝君の顕聖②ー清代乾隆年間、清水教の乱の事例
   関聖帝君の顕聖③ー清代広東省韶州府の事例
  三、顕聖する空間としての関帝廟
   関聖帝君の顕聖④ー清代嘉慶年間、天理教の乱の事例
   関聖帝君の顕聖⑤ー清代咸豊年間、太平天国・捻軍の事例
   関聖帝君の顕聖⑥ー王朝国家・反乱者集団・一般民衆と関聖帝君
  おわりに—関帝廟を通してみた王朝国家と関帝信仰

安史の乱異聞(戸田靖久) …393
  はじめに
  一、玄宗御製碑はなぜ言葉を発したか
   玄宗御製碑と立碑空間 玄宗御製碑の神秘性 黄巣の乱唐王朝 伝えられた「記憶」と怪異記事
  二、石言と怪異解釈
   石言とはなにか 石鼓が鳴れば… 石言怪異と王朝滅亡 安史の乱異聞
  三、朝鮮における「安史の乱異聞」
   望徳寺仏塔動く 仏塔をめぐる中国の怪異記事 新羅王朝と皇龍寺九層仏塔 朝鮮における「安史の乱異聞」
  おわりに

あとがき(大江篤) …423
  「怪異学」事始 「怪異」という言葉 平安京の「怪異」 「怪異」と中世王権 
  近世知識人と「怪異」 「怪異」の比較研究 近・現代の「怪異」 「怪異学」の出発

東アジア恠異学会の軌跡(戸田靖久) …430

執筆者一覧 …433