『怪異学講義』
『怪異学講義:王権・信仰・いとなみ』
著者:東アジア恠異学会 編
出版地:京都
出版者:勉誠出板
出版年:2021.9
大きさ容量等:445p ; 19cm
目次
序論 怪異学の視点(大江篤)…1
はじめに
一 「怪異学」のはじまり
二 「怪異」とはー言葉へのこだわり
三 学際から生み出された視点ー拡散論・媒介者論
むすびにかえて
総論 怪異学とは何か
日本の怪異・中国の怪異・その西方の驚異(榎村寛之)…33
一 東洋の「恠異」
日本の「恠異」
二 日本における「恠異」の受容と「驚異的」なるもの
三 日本の「驚異」とキリスト・イスラーム世界の「怪異」
おわりにー「怪異」と「驚異」
国家統治と怪異(久禮旦雄)…54
はじめにー「怪異」という言葉をめぐって
怪異の意味するもの 拡散する怪異
一 日本古代における「怪異」の受容と変質
六国史の怪異 『類聚符宣抄』と『本朝世紀』の怪異 読み換えられた「天」
独占された卜占の技術
二 「怪異」の形成ー知識の受容と独占
陰陽寮の成立と式占 陰陽寮の成立の意味 神祇官の成立と亀卜 神祇官の成立の意味
三 「怪異」の変質と拡散ー判断から不安へ
『小右記』の怪異 『古今著聞集』の怪異
通俗信仰と怪異ー前近代中国の基層社会における災異受容史(佐々木聡)…77
はじめにー怪異をめぐる社会通念
一 天変地異をうらなう「天文五行占書」の成立
二 中世の通俗占書
三 近世の怪異占と辟邪
四 通俗占書の利用と宗教者の関与
おわりに
各論 怪異から考える
第1部 王権と怪異(久禮旦雄)…101
一 警告する始祖たち
二 神々の合議
三 もう一つの国家
四 分裂する怪異
五 霊は沈黙する
社寺と怪異ー春日社の山木枯槁を中心に(山田雄司)…113
はじめに
中世社寺の怪異 多武峰の鳴動と鎌足木像の破裂
一 山木枯槁の発生
春日社と石清水八幡宮との対立 春日社の御神楽
二 由緒の形成
嘉元二年の山木枯槁 神護景雲二年の御託宣 時風置文 山木枯槁と神木動座
三 中世最後の山木枯槁
元亀三年山木枯槁 虫の発生
おわりに
謡曲「采女」 神棲まう春日山
奇談と武家家伝ー雷になった松江藩家老について(南郷晃子)…133
はじめに
一 雷電になった乙部九郎兵衛
葬儀中の雷 『本朝故事因縁集』「乙部氏為雷電」 「乙部九郎兵衛某」
二 高野山と乙部可正雷電譚
「出雲国乙部氏檀縁由来」について 僧侶清雄による解釈 「附書」と『本朝故事因縁集』
三 乙部家の記録と雷神伝承
「慶安二己巳年六月八日」の記 忠誠心と雷電
四 可正雷神伝承の展開
『雲陽秘事記』における記載 天神の発見と可正の神格化
おわりに
鎌倉幕府と怪異ー『吾妻鏡』の怪異を読む(赤澤春彦)…154
一 古代・中世の国家と怪異
二 鎌倉幕府における怪異の認定
三 鎌倉における怪異の「時」
偏りを見せる怪異の記事 幕府創設期の怪異 頼経期はなぜ怪異が多いのか
鎌倉における陰陽道の整備
四 鎌倉における怪異の「場」
鎌倉中の怪異 海辺の怪異 打つ寄せられる大魚 怪異を祓う境界、由比ヶ浜 東国における怪異
五 鎌倉における怪異の種類
動物の怪異 源氏将軍と鳩 黄蝶乱舞 漂う魂魄「光物」 怪異を祓う祭祀、百怪
怪異が「記録」されること
幕末の陰陽頭・朝廷と天変(杉岳志)…171
はじめに
一 天保十四年の彗星
天変の正体 晴雄の見解 親子二代の彗星観 晴雄の見解に対する反応 朝廷の対応
二 嘉永六年の彗星
勘文から読み取れる晴雄の本音
三 安政五年の彗星
勘文に生じた変化 彗星と将軍家定の死 蛮夷・彗星・異病 安政六年の彗星?
四 文久年間の彗星
合致した彗星観 旧説の復活
おわりに
コラム・古代日本への「天」の思想の伝来(細井浩志)…188
はじめに
一 怪異・天文と天の関係
二 天下の範囲
三 天と上帝と天照大神
四 中世の変化
第2部 信仰と怪異(久留島元・佐々木聡)…201
勝利に導く祖霊(佐藤信弥)…207
はじめに
一 〈殷代・西周時代〉祖霊の加護を求めて
殷代の戦争と卜占 殷周時代の宗教信仰 西周時代の戦争と祖霊 出征の前後の祭祀
二 〈春秋・戦国時代〉軍礼から兵法へ
春秋時代の戦争と卜占 宋嚢の仁 作戦・計画の場となる宗廟 祖霊観の変化
おわりに
霊験・神異・感通ー中国仏教における怪異なるものへの態度(佐野誠子)…223
はじめに
一 志怪における仏教の怪異
志怪における仏教の流入 仏教志怪の登場
二 霊験・応験記
『観世音応験記』 唐代の霊験記
三 彗皎『高僧伝』の神異
『高僧伝』神異篇 『高僧伝』における怪異なるものとの向き合い
四 道宣『続高僧伝』の感通
『続高僧伝』感通篇 感通篇の増補 神異から感通への拡張 『続高僧伝』における冥界
五 道宣の感通に関する著作
『集神州三宝感通録』 『道宣律師感通録』
六 その後の仏教と怪異
霊験記その後 『宋高僧伝』感通篇
道教と神降ろし(山田明広)…242
はじめに
一 神を降ろして憑依させる
(1)茅山の神降ろし (2)扶乩(フーチー)
二 神を儀礼の場に招き迎える
(1)存思 (2)上章 (3)斎 (4)醮 (5)その他の呪法 (6)現代の台湾の道教儀礼
むすび
天狗信仰と文芸(久留島元)…270
一 天狗の研究
二 天狗信仰の現在
三 画期としての鞍馬天狗
四 アタゴ山の信仰史
五 アタゴの天狗
六 愛宕山縁起と日羅
疫病と化物(笹方政紀)…290
一 令和の流行病とアマビエ
二 疫病神と甘酒婆
疫病神 甘酒婆
三 疫神送りと高入道
疫神送り 高入道
四 疱瘡神祭りと猩々
疱瘡神祭り 猩々
五 疱瘡絵と豆腐小僧
疱瘡絵 豆腐小僧
六 護符と神社姫
護符 神社姫
七 化物・妖怪を信仰すること
コラム・祟る「水子霊」(陳宣聿)…308
中国における嬰児殺し 溺女を戒める善書 現代の「嬰霊」とその祟り
一、上原大夫の歴史
二、江戸期の上原大夫の職務
三、近代の上原大夫の職務
四、上原大夫の衰退
おわりに
第3部 人のいとなみと怪異(木場貴俊)…321
村と怪異(木下浩)…326
はじめに
一 ツキノワ伝承の概要
二 二箇の月の輪田
三 現在も残るツキノワ
事例1 真庭市(旧落合町)のツキノワ 事例2 新見市(旧神郷町)のツキノワ
四 特異な立地のツキノワ
事例3 岡山県北部の輪田 事例4 岡山県北部のイハイダ 事例5 岡山県中央部のツキノワ
五 神聖な土地としてのツキノワ
事例6 真庭市(旧落合町)のツキノワ(輪田) 事例7 真庭市(旧落合町)のツキノワ
六 禁忌や凶事が変遷していくツキノワ
事例8 美咲町(旧中央町)のタケナリタンボ 事例9 鏡野町(旧富村)のツキノワ田
七 江戸時代の地誌に見るツキノワ
事例10 『山陽道美作記』の月の輪 事例11 『東作誌』の月の輪
まとめにかえて
近世京都の小社と怪異(村上紀夫)…358
一 土佐坊昌俊と冠者殿社
四条京極の「怪異」 怪異譚の舞台は
二 冠者殿社をめぐる人びと
素戔嗚尊と土佐坊昌俊 冠者殿社の再興 冠者殿社の由来記 吉田神道と祇園社
三 誓文返しの神由来
誓文祓いのはじまり
四 十七世紀の冠者殿社
四条御旅所神主津田兵部 津田兵部による誓文祓いの創始 津田兵部が手に入れた文書とは
おわりに
怪物を食らう(木場貴俊)…379
はじめにー貝原益軒の日記から
一 さまざまな怪物を食らう
人魚 雷獣 河童 三十三間堂の妖物 植物の奇譚
二 江戸時代の肉食をめぐって
肉食への忌避 獣肉料理 ももんじい 薬としての獣肉食 本草書に見る怪物
三 怪物と薬食
『一宵話』の異人 旧記 封 薬食と武勇
おわりに
絵巻の中の神と「モノ」ー目に見えぬものをいかに描くか(山本陽子)…399
はじめに
一 「神」はどのように造形されたか
見えない神々 神々の姿を視覚化する 一 「神」はどのように造形されたか
二 「モノ」の姿はどのように記されたか
見えない「モノ」を言葉で表す 特異な姿の「モノ」の記述
三 絵巻に描かれた「モノ」
平安時代の絵巻と「モノ」
四 多様な姿の「モノ」たち
描かれ始める「モノ」 さまざまな形状の「モノ」の登場 「モノ」の形態はどこから
「モノ」を主人公とする絵巻 鍋と釜をかぶつ「モノ」
五 絵巻に描かれた神と「モノ」の効能
見てはならない神を縁起絵巻に描く なぜ絵巻に神の顔を描かないか 「モノ」の絵姿を見る効用
コラム・石を降らせるのはなにものか?(化野燐)…424
はじめに
一 江戸の町には狐狸が降らせる
二 鹿児島では人が振らせる
三 祀られなくなった「お化け」たち
おわりに
あとがき(大江篤)…438
執筆者一覧…441