妖怪司書の本棚

架蔵の妖怪本の書影・書誌・目次をひたすら誌す。

『異界と日本人』

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『異界と日本人(角川ソフィア文庫)』

著者:小松和彦

出版地:東京

出版者:KADOKAWA

出版年:2015.7

大きさ容量等:206p ; 15cm

目次

異界論のすすめ …6

序章 異界をめぐる想像力 …9

「異界」とはなにか 人間の心の「闇」 境界の両義性 神と妖怪

第一章 反魂の秘術—『長谷雄草紙絵巻』 …21

長谷雄、鬼と双六の勝負をする 西行も知っていた鬼の秘術 人を作る「反魂の秘術」 陰陽道と「生活続命の法」

第二章 源頼光酒呑童子—『大江山絵詞』 …33

大江山酒呑童子退治 安倍晴明泰山府君祭 追儺会と頼光一党 猿神退治の系譜

第三章 妖狐の陰謀—『玉藻前草紙絵巻』 …47

安倍泰成、那須野の妖狐を退散させる 陰陽師の悪霊祓い儀礼とその説話 武士と宗教者 王権説話としての妖怪退治譚 歴史的背景

第四章 龍宮からの贈り物—『俵藤太絵巻』 …61

俵藤太、百足の妖怪を退治する 妖怪百足のイメージ 土着勢力の争いと新来勢力 富の象徴としての「俵」「巻絹」と「童子

第五章 龍宮の逆説—『浦嶋明神縁起絵巻』 …75

浦嶋太郎の龍宮訪問 龍宮の多重イメージ 約束の違反と龍宮の時間 「四方四季の座敷」

第六章 天界への通路—『天稚彦草子絵巻』 …91

天界訪問譚としての日本の七夕説話 異界往還のための衣装としての蛇の皮 「唐櫃」の二重性あるいは「打出の小槌」と「玉手箱」 天の架け橋としての「一夜ひさご」 昔話「天人女房」との類似

第七章 義経の「虎の巻」—『御曹子島渡』 …107

義経、鬼の大王の秘巻を盗み取る 変形された龍宮訪問譚 「虎の巻」とはなにか 「虎の巻」と義経 「虎の巻相伝の次第」 安倍晴明の『金烏玉兎集』

第八章 天狗と護法童子—『是害房絵詞』 …121

是害房天狗、比叡山の高僧に挑戦する 護法童子の活躍 天狗と神隠し 怨霊天狗と天狗の内裏

第九章 狐の「浄土」と異類婚姻—『狐草紙絵巻』 …137

老僧、狐にばかされる 狐の世界の時間と空間 異類婚姻と異界 狐の子どもとしての安倍晴明 狐の化け方

第十章 百鬼夜行のパレード—『付喪神絵巻』 …153

小道具の妖怪「つくも神」 古道具、百鬼夜行となって跳梁する 新しい妖怪登場の萌芽 『百鬼夜行絵巻』の登場

第十一章 幽霊の近世—『死霊解脱物語聞書』 …167

祐天上人、菊に憑いた累の怨霊を成仏させる 怨霊から幽霊へ 村落共同体と排除・差別 異界物語の誕生 異界の変容と妖怪・幽霊の衰退

終章 異界観の変容と妖怪文化の娯楽化 …183

江戸の異界観 百物語怪談会と百物語 多様化する妖怪たちとそのキャラクター化 江戸妖怪文化の集成としての『稲生物怪録』 見失われた異界と妖怪の回復

あとがき …199

文庫版あとがき …204

 

*『異界と日本人(角川選書)』(角川書店, 2003.9)を文庫化

『呪いと日本人』

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『呪いと日本人(角川ソフィア文庫)』

著者:小松和彦

出版地:東京

出版者:KADOKAWA

出版年:2014.7

大きさ容量等:236p ; 15cm

目次

 

プロローグ—なぜ、いま「呪い」なのか …11

 「呪い」との出会い

 現代に生きる「呪い心」

 誰かがあなたを呪っている

1章 蘇る「呪い」の世界 …23

 「呪い」をめぐる試作のはじまり

 医者でもなおせない病気

 「生霊」が、他人に災いを及ぼす

 犬神は、富も災いももたらす

 犬神憑きとの出会い

 犬神対祈禱師の戦い

 「呪い」のスペシャリストが、「呪い」をでっち上げる

 呪詛信仰・いざなぎ流

 「返りの風を吹かして」人を呪う

 悪魔・外法を切り刻む

 どうしたら人を呪い殺せるか

 「祭文」が教える「いざなぎ流」の起源

 いざなぎ流祈禱師は、「外法使い」か

 ある呪いの物語

 呪詛の起源と報酬のシステム

 なぜ、現代人は水子の祟りを気にするのか

 呪いの世界へのタイムマシン

2章 なぜ、人は「呪い」を恐れるのか …71

 「おまえを呪ってやる!」

 「呪い」が支配する世界

 禁止するから、ますます呪う

 呪われた奈良王朝

 近い関係だからこそ、「呪い」が生まれる

 「呪い心」に説明を与える

 日本歴史を転換させた「死者の呪い」

 なぜ、死者を恐れるのか

 御霊—人間の恐怖心が「創造」した神々

 触らぬ神に祟リなし

 人を鬼と変える「呪い心」

 恐怖すべきは人の心

 人間社会は最初から呪われていた

 「正義の呪い」とは

 文明開化は呪い鎮めとともに

 動乱期に跋扈する怨霊

 社会を批判する死者の呪い

 なぜ、人は「呪い」を恐れるのか

 誰もが呪い、呪われる

3章 どのように呪うのか …119

 言霊信仰—言葉を発すれば、それが「呪い」となる

 「とこう」—記紀神話のなかの呪い

 呪禁道—呪的バリアで身囲い・身固めする

 蠱毒—動物の魂魄を操り、人を死に至らしめる

 厭魅—人形を責め、人を死に至らしめる

 呪術は技術なり—支配者を魅了するニュー・テクノロジー

 吉備真備の陰謀

 陰陽道—「式神」を操り、人を呪殺する

 密教の中核にある呪い信仰=調伏法

 密教調伏法—不動明王を操り、呪殺する

 「呪い」のスペシャリスト・空海

 神仏を責めたて、呪力をパワーアップさせる

 「逆さま」の呪法

 いまなお生き続ける密教調伏法

 狐を操る「外法」

 天皇即位の「秘法中の秘法」とは

 「荼吉尼天法」て鎌倉幕府を呪詛調伏した後醍醐天皇

 武田信玄上杉謙信が用いた「飯綱の法」とは

 敬愛法—男女和合のラブ・マジック

 神仏に無理やり「呪い」を引き受けさせる法

 神仏に釘を打ち込むだけで「呪い」が発動する

 「丑の時参り」の作法・その壱

 「丑の時参り」の作法・その弐

 「丑の時参り」の作法・その参

4章 「呪い」祓うシステムとは …179

 「水戸黄門」のラスト・シーン

 「呪い」が「ケガレ」を発生させる

 「ケガレ」は「外部」からやってくる

 「ケガレ」を祀り上げ、棚上げにする

 「桃尻」風、清少納言の祓いの儀礼

 呪術師が操る「ケガレ」を視覚化するトリック

 祭りがみんなを「晴れ晴れ」させる

 天皇に凝縮される国家の「ケガレ」

 社会的地位が上昇するほど集中する「ケガレ」

 日本人は、なにを「好ましくないケガレ」としたのか

 「鬼」の登場—「見えないもの」を「見えるもの」にするトリック

 誰が「鬼」を演じ、祓い捨てられたのか

 「ケガレ」発生の原因は為政者にある

 「右手に剣を、左手に数珠を」

 権力は、呪術によって支えられている

 「ケガレ」を祓う「ガス抜き」の儀礼

 「スケープゴート」を生み出す「フェイルセーフ」機構

 神仏までもが「スケープゴート」にされる

 次に「御祓い箱」にされるのは誰か

エピローグ—「人を呪わば穴ふたつ」 …229

文庫版あとがき …233

 

*『日本の呪い:「闇の心性」が生み出す文化とは (カッパ・サイエンス)』(光文社, 1988.2)に加筆・修正し、文庫化

『妖怪文化入門』

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『妖怪文化入門』

著者:小松和彦

出版地:東京

出版者:角川学芸出版

出版年:2012.6

大きさ容量等:255p ; 15cm

目次

I 妖怪文化への招待

妖怪文化とは何か …6
はじめに 出来事としての妖怪 超自然的存在としての妖怪 造形化された妖怪 古道具の妖怪化と怪異現象の妖怪存在化 妖怪研究の足跡と現在 現代日本人の妖怪イメージ
時代と文化を超える「妖怪」 …28
「妖怪」の定義 なぜ「妖怪・妖怪現象」が現れるのか エティック、エミック 文化の翻訳
II 妖怪文化研究の足跡
憑きもの …56
「憑きもの」とはなにか 「憑きもの」研究の変遷 神霊の分類 「怪しい獣」の噂 「憑きもの」信仰 迷信の打破 神秘的な手段 「憑きもの」信仰の消滅 「憑きもの信仰」から「憑霊信仰」へ 共同幻想の変容 狐の「託宣」 宗教者の役割
妖怪 …86
「妖怪」とはなにか 妖怪画への関心 妖怪研究の黎明期 柳田國男の妖怪観 柳田以降の妖怪研究 妖怪研究の新開 人間研究としての妖怪研究
河童 …107
「河童」とはなにか 河童伝承の分類 「河童」の民俗学的研究 「河童駒引考」の誕生 山と河に棲む河童 「河童」研究の新展開 書き換えられた河童論 人々を魅了する河童 
鬼 …131
「鬼」とはなにか 鬼の使われ方 「鬼」というラベル 「鬼」への二つのアプローチ 「鬼は想像上の生き物」 鬼伝説へのまなざし 「鬼」の祭儀・芸能と民俗学 鬼になったナマハゲ 鬼の正体
天狗と山姥 …155
妖怪を代表する天狗と山姥 天狗研究の足跡 天狗のイメージ 天狗を祀る人びと 「天狗」の民俗学的研究 「山姥」研究の足跡 山姥のイメージ
幽霊 …179
「幽霊」とはなにか 「幽霊」と「妖怪」の違い 「幽霊」であることの基本条件 「幽霊」研究の足跡と展開 幽霊文化を育てる死者への思い
異人・生贄 …201
「異人」とはなにか 異人・生贄・村落共同体 異人殺しの伝承 異人への眼差しの変化 「異人」と「家」の盛衰 「異人」概念の変化
境界 …221
「境界」とはなにか 「境界」としての「空間・場所」、「境界」としての「時」 境界の「場所」 教会の「時」 「境界」を象徴するもの 怪異と時間の境界性

参考文献 …238

所蔵先一覧 …253

文庫版あとがき …254

 

*『妖怪文化入門』(せりか書房, 2006)から「妖怪文化入門」「『妖怪』は文化を超えられるか」を削除。

『神隠しと日本人』

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神隠しと日本人(角川ソフィア文庫)』

著者:小松和彦

出版地:東京

出版者:角川書店

出版年:2002.7

大きさ容量等:238p ; 15cm

目次

文庫版まえがき …7

プロローグ …11

不思議な出来事/異界の消失/神隠し願望/文学作品のなかの「神隠し」/異界に遊ぶ

第一章 事件としての神隠し …27

村の失踪事件/帰ってきた失踪者/家出・自殺・神隠し/束の間の失踪/神隠し幻想/狐に化かされる/体験者の証言/「神」に選び出された者/「神隠し」へのアプローチ

第二章 神隠しにみる約束事 …55

神隠し譚の類型/夕暮れどき/隠れ遊び=隠れん坊/隠れ遊びの約束ごと/神と人が融け合うとき/鉦・太鼓による捜索の作法/音による異界との交信/神隠し事件の四つのタイプ/やさしい社会のコスモロジー/失踪者の異界報告/天狗と異界イメージ/人間界と異界の媒介者としての少年/行方不明の娘たち/神隠しの理想型と諦めの儀式

第三章 さまざまな隠し神伝説 …117

民俗社会の異界イメージ/隠し神としての天狗イメージ/天狗信仰の歴史/妖怪から怨霊へ/江戸時代の天狗隠し/狐隠し/幻想の人間社会/狐はなぜ人をだましたがるのか/鬼のイメージ/鬼と天狗/酒呑童子伝説/対抗世界としての鬼の王国/山姥から口裂け女へ/「脂取り」と纐纈城

第四章 神隠しとしての異界訪問 …167

浄土=ユートピアとしての異界/夢と異界訪問譚/異界体験談から昔話への変換/異界の時間・人間界の時間/人間と神との交換/「いばら姫」と「浦島太郎」の時間比較/超時間装置「四方四季の庭」/社会復帰する「竜宮童子」/異界イメージの多義性

第五章 神隠しとは何か …199

現代の失踪事件/「神隠し」のヴェールを剥ぐ/人さらいと大袋/人身売買のネットワーク/児肝取り伝承「阿弥陀の胸割」/神隠しの現実隠し/夢が異界へいざなう/神隠しなき時代/社会的な死と再生の物語

解説 驚嘆すべき解答 高橋克彦 …231

参考文献 …235

 

*『神隠し—異界からのいざない』(弘文堂, 1991.3)を改題の上、加筆・訂正。

『誰も知らなかった京都聖地案内』

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『誰も知らなかった京都聖地案内:京都人が日本人にとっての「靖国の神」とは何か(知恵の森文庫)』

著者:小松和彦

出版地:東京

出版者:光文社

出版年:2006.4

大きさ容量等:239p ; 16cm

目次

プロローグ—「旅」することが、もっとおもしろくなる …11

 「秘められたもの」に接近遭遇するために

 能楽には「聖地・異界」が映し出されている

 神仏は夢の中にこそ登場する

 「異界」を覗き見るのに必要なもの

 京都人のコスモロジーが作りだした「聖地・異界」

第一部 京都人による京都人のための聖地 …27

鞍馬・僧正が谷—《鞍馬天狗》で牛若丸と出会う …28

 鬼も出れば大蛇も出る

 「虎の巻」に取り憑かれた人びと

清水・音羽の滝—縁結び・子授けの聖地 …36

 豊饒を約束する聖なる水

 男女の縁を結ぶ、清水の観音

 音羽の滝こそが清水の聖地

愛宕山—天とも地ともつながる空間 …45

 天狗の像に釘を打ち、天皇を呪う

 愛宕山を天界・魔界へと結ぶ世界樹

大江山・千丈ヶ嶽—京都人が怖れた「鬼の棲む山」 …54

 京都の人びとが頭の中に作りだした異界・魔界

 「まつろわぬ者」に託された鬼のイメージ

葛城山—「敗者」を祀る修験道の聖地 …62

 京の町はずれには土蜘蛛が棲む

 天皇にまつろわぬ者たちの聖地・葛城

貴船—女の哀しみを知る神に出会える …72

 心の「闇」に鬼が棲みつく

 現代まで生き続ける丑の刻詣り

河原院—化け物屋敷には吸血鬼が棲む …81

 家への執着が「化け物屋敷」を生む

 吸血鬼の棲む家

比叡山横川—不動明王を祀るおみくじ発祥の聖地 …89

 加持祈祷は、比叡山横川におまかせあれ

 怖ろしくもユーモラスな元三大師

稲荷山—伏見稲荷は「富貴自在」 …98

 「神」と出会うことで、技芸が成就する

 謎だらけの稲荷信仰

逢坂山—「さかさま」とは …109

 「関東」と「関西」の境はどこにあったのか

 逆髪が語る、「さかさまの思想」

竹生島地震鯰を押さえる「要石」 …118

 自然崇拝の聖地・竹生島

 「金輪際」から湧いてきた仏教の聖地

芦屋—京都人の「あの世」観 …127

 芦屋は、京に住む人の「あの世」だった

 鵺を神に祀った京都の聖地

第二部 京都人が「外部」に発見した聖地 …137

吉野—聖地には桜がよく似合う …138

 歴代天皇が足繁く通った聖地

 「王を蔵す」吉野山

熊野—死者と出会える聖地 …148

 死と再生の聖地・熊野

 護法童子というボディガー

龍宮—敵にもなれば味方にもなり …157

 王権を支える龍宮神話

 龍宮城は、富も災厄ももたらす

山姥の棲む山—山はエネルギーに満ちている …166

 山姥は、鬼・化け物か福の神か

 母性のシンボルとしての山姥

天人の棲む世界—天女の父は鬼なのか …175

 天女が山間の湖に舞い降りるわけ

 京都人がイメージした天界の王は、鬼であった

富士山—帝が「不死」の山に赴いたわけ …184

 富士山は「不死」の山

 「天」にも「地」にもつながる世界山

立山—京都人が「発見」した地獄 …193

 あの世の地獄がこの世に現れる

 立山には、罪を犯した死者が送り込まれてくる

白峯—京都の災いはこの地から去る …203

 怨霊は、いかに発生するか

 天皇家が最も恐れた怨霊

那須野—雌鶏が歌い国滅びる …211

 王権を揺るがす女の正体は狐だった

 「げんのう」の由来

戸隠—敗者としての鬼を祀る聖地 …219

 鬼女に託された古代の記憶

 鬼の正体は、男か女か

安達が原—鬼婆が出没する空間 …228

 「見てはいけないもの」を見てしまうと……

 なぜ「生き肝」にこだわるのか

あとがき …237

 

*雑誌『観世』(檜書店)の連載「能のなかの異界」(2003年7月〜2005年7月)を再構成し、加筆修正して、文庫化。

『神になった人びと』

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『神になった人びと:日本人にとっての「靖国の神」とは何か(知恵の森文庫)』

著者:小松和彦

出版地:東京

出版者:光文社

出版年:2006.7

大きさ容量等:266p ; 16cm

目次

 文庫版序論 なぜ、人を神として祀るのか—「靖国の神」と日本人 …9

 「靖国の神」の成り立ちとその特殊性

 「たましい」は、誰が管理するのか

 記憶の切れ目が縁の切れ目

 なぜ、「靖国の神」が必要とされたのか

 二四六万六千余柱が一つの神となる

 神に祀りたいという心性はどこから来るのか

 日本人が抱く「後ろめたい」という感情

プロローグ—人はいかにして神になるのか …39

 人神の誕生—祟らなければ神になれない

 「靖国の神」は、どこから生まれてきたのか

一章 利用すれば何かいいことがある …51

藤原鎌足談山神社 …52

 密談をした山から生まれた談山神社

 被葬者をたばかる藤原氏の陰謀

 政治の場で「神」が果たした役割

 訪れた多武峰は、意外に明るかった

源満仲多田神社 …67

 神に祀られた清和源氏の祖・源満仲

 多田院の鳴動—子孫の働きかけに祖先が応える

 「源氏神話」—王権を支えるファンタジー

 出征兵士の信仰を集める

安倍晴明晴明神社 …81

 スーパースター、揺籃の地はどこか

 日本文化に陰陽道を定着させる

 下級の宗教者が、祖神として仰ぐ

 日本文化の周縁に息づく晴明信仰

二章 ひょっとしたら祟るかもしれない …95

井上内親王早良親王上御霊神社 …96

 怨霊という名の封じ込められた神々

 呪詛が呪詛を生み、そして怨霊を生む

 歴史上、最も名高い天皇が怨霊に祟られ続けたという事実

 死後千年以上の人物を神に祀る

菅原道真北野天満宮 …108

 怖ろしい神から学問の神へ

 菅原道真という人物の虚と実

 祀り上げのメカニズム—あらゆる災厄は道真がもたらす

 「神」の名を獲得した人神・菅原道真

佐倉惣五郎東勝寺宗吾霊堂 …120

 義民・佐倉惣五郎とは

 平将門の怨霊に招かれた惣五郎の霊

 なぜ、惣五郎は怨霊として祀られたのか

 怨霊型義民伝承が自由民権運動に与えた影響

平将門神田神社 …133

 日本資本主義の中核に、反権力のシンボルが眠る

 恐怖心が神や仏を総動員させる

 祀る側の思いが祟りの現象を生み出す

 徳川家康による将門の政治的利用

 将門にこだわった、江戸っ子の心意気

山家清兵衛和霊神社 …147

 「死国」を支配する祟りの思想

 それは藩主による家老暗殺事件から始まった

 和んでほしい、祟らないでほしい

 百年間、清兵衛の祟りは続いた

 司馬遼太郎がみた山家清兵衛

三章 見えざる「力」を借りるために …161

楠木正成湊川神社 …162

 団塊世代にとっての楠木正成

 後醍醐天皇に殉じた出自不明の男

 ゲリラ的悪党軍団を支えた勢力とは

 正成再発見がもたらした勤王攘夷の思想

 楠木正成の軽やかさを現代に生かす

豊臣秀吉—豊国神社 …174

 足軽から天下人へ、そして人神へ

 わずか四十五センチの大仏が秀吉に祟った

 どうしたら人は神になれるのか

 明治天皇・新政府による秀吉の政治的利用

徳川家康日光東照宮 …188

 家康が目をつけた日光という「土地の記憶」

 黒幕・天海が果たした役割

 明治政府が破壊した、日本を守護する壮大なコスモロジー

四章 いつまでも記憶しておくために …201

お竹—羽黒山小竹大日堂 …202

 江戸っ子に愛されたお竹

 伝説はいかにしてできあがるのか

 アイドルに仕立て上げた仕掛け人は誰か

 スターダムをかけ上がり「昇天」する

西郷隆盛南洲神社 …215

 大義に殉じるという、その生き方

 民意の不満から湧き上がった、西郷神格化へのプロセス

 西郷どんをいつまでも忘れないために

増田敬太郎—増田神社 …227

 ベストセラー『にあんちゃん』に語られた由来

 人びとのために死ぬということ

 増田神社にあだをなすと祟られる

 巡査大明神—神になった警官

文庫版あとがき たましいは、いかに祀ればいいのか …240

登場した寺社ガイド・参考文献

解説 梅原猛 …263

*『神になった人びと』(淡水社, 2001年)を再構成し加筆修正。

『日本魔界案内』

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『日本魔界案内:とびきりの「聖地・異界」をめぐる(知恵の森文庫)』

著者:小松和彦

出版地:東京

出版者:光文社

出版年:2002.7

大きさ容量等:286p ; 16cm

目次

 

はじめに …3

1 高野山 生死を超越するスーパースターに会いに行こう …17

壇上伽藍 …19

 死者の魂は高野山をめざす 生きている空海に会いに行こう

奥の院 …31

 死者を蘇らせる反魂の秘術 権力者の力の源泉は真言密教にあった 男女和合こそが信仰の極致

丹生都比売神社 …46

 高野山に隠された秘密 高野山を奪取した空海の陰謀 空海に利用された者の末路 空海は水銀鉱脈のありかを知っていた 真言密教の秘法・土砂加持とは 「高野」「天野」の闇は、「吉野」へと続く

2 吉野 桜の樹の下には、何が埋まっているのか …65

蔵王堂 …67

 吉野には黄金が眠っている 金を支配・守護する神=金剛蔵王権現 役行者と久米の仙人 吉野の山に伝わる鬼の血脈 蛙を人間に変える修法とは

脳天大神 …81

 日本列島をつなぐ「闇」のネットワーク いまなお生き続ける修験道のパワー

3 京都 呪いが支配する、日本人の心の故郷 …89

鞍馬 …91

 呪的防衛都市・京都 由岐神社に日本的スケープゴートの源流を見る 鞍馬=暗魔が生んだ牛若丸伝説 木の根道は、鬼の国ヘとつながっている

貴船 …110

 貴船の神は、願い事をなんでも聞き入れてくれる 呪いを引き受け、人を鬼に変える神とは

北野天満宮 …117

 いまなお京洛に残る道真祟りの痕跡 なぜ、雷神は鬼の姿で描かれるのか

八坂神社 …124

 華やかな「祇園さん」には、恐ろしげな神が祀られている 「雷神の生まれ変わり」を標榜する人びと 今に伝わる鬼の末裔たち 流行発信基地・北白川には、パンク・ファッションがよく似合う

晴明神社 …136

 日本歴史のブラックホールをつくりだした人びと 天神—雷神—鬼のネットワーク

六道珍皇寺 …143

 京都盆地は、死者の魂に取り囲まれている ご先祖へのメッセージを鐘の音に託す この世とあの世を往還した、知られざるスーパースター・小野篁

清水坂 …152

 清水の往時を知りたければ、夜詣りにかぎる 縁を結びたければ、清水の舞台から飛び降りるつもりでどうぞ 「縁切り」とは、新たな「縁結び」にほかならない

4 熊野 日本サッカーの守護神に導かれて三山巡りへ …165

新宮 …167

 遠いからこそありがたく感じることもある 最古の修験道根本道場の、さらなる源流を探る 死を意識させる祭り、それが神倉神社の火祭りだ

那智勝浦 …177

 那智山に参詣すれば、観音様に出会える 南海の彼方にこそ観音浄土がある

熊野本宮 …188

 温泉は、「この世」への再生を実現してくれる 熊野に残されたスサノオの足跡 熊野は、出雲王権の植民地か

田辺 …198

 権力者が熊野詣でに狂奔した理由 大名にまでなった鬼の末裔

道成寺 …205

 怨みを晴らすために「鬼」に変じる

和歌山 …209

 敗者が祀る征服者の神とは 「紀の国」は。「木の国」「鬼の国」であった

5 津軽 「悲しき国」は「北のまほろば」だった …217

十三湖 …219

 「まつろわぬ人びと」の「北のまほろば」 鬼が作った「日の本」という国 津軽人の心の深層に潜む「鬼」とは

西の高野山弘法寺 …228

 死後に添い遂げる「冥婚」という儀式 地獄・極楽の入口は大陸にもつながる

岩木山 …234

 人びとの怨念が浄化される場所 「鬼」たちの最後の聖地・岩木山

6 出羽三山 聖=性なる空間が、生と死をつなぐ …241

羽黒山 …243

 出羽三山への信仰は、「たむけ」から始まる いったん死に、そして再生する 聖と性はオーバーラップする 羽黒山信仰に隠された秘密

湯殿山・月山 …259

 即身仏は、何を訴えているのか

7 阿蘇 「火の国」に神々の夢の跡をたどる …265

天上伽藍 …267

 日の山の祭神たちの「出自」は… 「雲をつくような」強大な侵略者、それが天皇家だった 「大鯰」は、敗れ去った者たちの象徴だった 「聖所」はまた、「魔界・異界」でもあった