妖怪司書の本棚

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『他界への冒険』

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『他界への冒険:失われた〈鬼〉を求めて(光文社文庫)』

著者:小松和彦, 立松和平

出版地:東京

出版者:光文社

出版年:1993.2

大きさ容量等:283p ; 16cm

目次

 

第一章 共同体の富と他界 …7

民話は民衆の記憶装置 「ウントク譚」の魅力 童子は他界とのメッセンジャー 「不浄」が富に転化する 不浄なものの排除 対立するものとしての他界 すぐそこにある他界 縮小していく世界 共同体の外から来るもの 他界との交渉としての皇室祭祀 共同体秩序と他界 民衆の死生観 山人の世界の意味 自己史と農村文化 農民的心性の強さ

第二章 憑霊現象とシャーマニズム …55

ラリー・レースと憑霊 憑霊は意識の変換状態 コントロールされた憑霊とコントロールされない憑霊 シャーマンの役割 天をコントロールする 水をめぐる争い シャーマンによる解決 メタ・レベル化ということ シャーマンを作りだすもの 失敗したシャーマンの悲劇 神を呼ぶテクニック 非日常空間としての「山」 肉体の極限で見えてくる世界 断食と「聖」の世界 シャーマンとしての文学者 現代と闇の世界 「新しさ」は価値なのか 「反自然」としての農業 「表層」と「配列」

第三章 都市・山人・他界 …113

民話・神話・伝説 パターンとしての「桃太郎」 「一寸法師」における「都市」 「物ぐさ太郎」の面白い構造 都市の感性、都市の論理 物ぐさ太郎はトリックスター? 農村からの視点、山人からの視点 価値の相対化と共同体批判 他界としての「海」 他界との交通と共同体の維持 此岸より彼岸への旅 逆転した秩序の世界 翁と媼、山姥と山爺 「男」は文化的、「女」は自然的

第四章 文明化と他界の喪失 …165

他界の消失がバイセクシャリティを生む 戦場で人間は輝くか? 文明と肉体生の喪失 他界の再建は可能か 「自然」としての人間 妖怪はいまどこに? 農業の病理 山村の崩壊と都市の崩壊 「森」における殺戮 「死」の風景の消滅 「死」との交換 霊魂を「信じる」ということ

第五章 中世への新視角と現代社会 …205

牛若丸と闇の王国 橋は他界との接点 異類婚姻と英雄譚 闇の世界の交通 橋の上の世界、橋の下の世界 人造人間としての「河童」 職能集団の発生と「差別」 技術・流通・都市 「釈迦こうていの祭文」 滅ぼした側の歴史と滅ぼされた側の歴史 都市の妖怪「付喪神」 「付喪神」と民衆の自然観 シミュレーションとしての「自然」 自然を変形することへの不安 学問と現代文明批判 排除される部分の開示 清潔な「下水処理場」 「他界」への感受性を育てる 「他界」を探す旅

用語解説 …259

おわりに …271

 講義を終えて 小松和彦

 講義を受けて 立松和平

文庫版あとがき

 

*底本:『他界をワープする:民俗社会講義(Lecture books)』(旭出版社, 1984.11)